技術流出対策ガイダンスとは?企業が知っておくべき対応策と実践ポイントを解説

技術流出対策ガイダンスの目的と背景
2025年5月23日、経済産業省は「技術流出対策ガイダンス第1版」を公表しました。本ガイダンスは、日本企業が保有する先端技術などが、意図せず海外などへ流出することを防ぐために、企業が実践できる対策の「選択肢」を整理・提示したものです。義務を課すものではなく、あくまで参考として活用できる実践的資料となります。
経済のグローバル化が進む現在、企業の成長には、海外拠点の設置や多様な人材の活用、海外企業との提携といった国際展開が欠かせません。こうした取り組みを萎縮させないためにも、技術流出のリスクには適切な対策を講じつつ、前向きにビジネスを進めることが重要です。技術流出対策は、単なるコストではなく、ビジネスを強化する前提となる“投資”と捉えるべき時代に入っています。
そこで本ガイダンスは、従来の「民間ベストプラクティス集 -第2.0版-」を基に、有識者研究会での検討を踏まえ、内容を拡充・体系化したものとして策定されました。政府は今後、地方経済産業局や独立行政法人とも連携しながら、本ガイダンスをもとに官民対話やアウトリーチ活動を強化していく予定です。
技術流出対策ガイダンスの構成と主な内容
本ガイダンスでは、第1版として「意図せざる技術流出が生じうる代表的な6つのケース」の中から「生産拠点の海外進出に伴う技術流出」、「人を通じた技術流出」の2つのケースに焦点を当て、それぞれについて、実際に発生した事例にそって具体的な対応策を体系立てて提示しています。(残りの4つのケースについては今後検討される予定)
生産拠点の海外進出に伴う技術流出への対策

海外拠点での生産や製品開発を行う場合を想定した技術流出対策については、計画前や契約時、海外事業の実施段階、契約終了時などの段階に応じた対応策が提示されています。
具体的には、海外拠点を含む情報管理規定の整備や提供する技術情報の管理方法についての取り決め、現地拠点でのセキュリティ体制構築などが例として挙げられています。
人を通じた技術流出への対策

人による技術情報の持ち出しや営業秘密漏洩への対策については、流出を未然に防ぐ対策だけでなく、流出してしまった時の対策や、優秀な技術者自体が流出しないための対応などについて示されています。
具体的には、コア技術の特定からその重要度に応じたアクセス管理、営業秘密管理の徹底、再発防止策の策定と徹底、さらに優秀な技術者の待遇向上などが挙げられています。
なお、資料の最後には、参考資料として企業の自己点検に使えるチェックリストが付属しており、自社の現状確認やリスク評価に活用できる実用的な構成となっています。
技術流出対策ガイダンスの要点と当社製品の対応状況
技術流出対策ガイダンスでは、企業がとるべき対応策としてさまざまな選択肢が示されていますが、なかでも特に重要な要素として強調されているのが以下の3点です。
- 技術的に重要な情報を特定すること
- その情報の重要度・機微度に応じて管理レベルを設計すること
- アクセス制限や取扱制御といった具体的な管理手段を講じること
これらは、技術情報を「誰に・どこまで・どのように見せるか」という観点で段階的に制御するための基本方針であり、実際の運用には現場で機能するツールが不可欠です。
当社のファイル暗号化・DRM/IRMソリューション「DataClasys(データクレシス)」は、このうち「特定された重要情報に対して、その機密区分に応じた暗号化・アクセス制御・操作制限を実行する」という点に強みを持っています。たとえば、「極秘」「社外秘」「取り扱い注意」といった区分に基づき、ファイル単位で閲覧・編集・印刷などの可否を制御することで、ガイダンスが求める技術的管理の実装を支援しています。
以下では、当社製品がこれらのポイントにどのように対応しているかを3つの観点からご紹介します。
【1】機密区分に応じたファイル保護
技術流出対策の出発点は、重要度・機密度に応じて異なるレベルで情報を守ることです。当社製品では、「極秘」「社外秘」「取り扱い注意」などの機密区分をファイルに付与することで、適切な暗号化と操作制限が適用されます。
また、ファイルには暗号化されていることを示す鍵アイコン(オーバーレイ)が表示されるため、従業員が「このファイルは重要だ」と視覚的に認識しやすくなっており、営業秘密管理における「秘密管理性」の確保にも貢献します。
【2】アクセス制御と操作制限によるリスク抑止
ファイルごとに設定されたアクセス権限は、閲覧・更新・コピー・印刷・スクショといった操作単位で細かく制御可能です。さらに、管理者画面からの操作により、退職者や異動者に対してファイルへのアクセスを即座に剥奪できます(予約設定も可能)。
海外の取引先にファイルを提供する場合にも、契約期間に合わせて利用期限を設定したり、期限付きIDを発行して契約終了後に自動的に無効化することができ、情報の漏洩を防ぎます。
【3】復号ログによるアクセス把握
当社製品では、ファイルの復号操作については必ずログを取得しています。これにより、「誰が・いつ・どのファイルを復号したか」を把握でき、一度に大量の復号操作が行われた場合などに、ログをもとに調査を行うことも可能です。
このように、当社製品は「重要な情報に適切な制御をかける」という観点で、技術流出対策ガイダンスの基本方針と高い親和性を持っています。自社で複雑な対策を一から設計することなく、実用的なツールを活用することで、現場の負担を抑えながら効果的な対策を講じることが可能です。
技術流出対策として当社製品が選ばれる理由
DRM/IRM(Digital/Information Rights Management)は、ファイル自体を暗号化することで、サイバー攻撃に加え、内部不正や委託先に渡したファイルの不正利用に対しても高い効果を発揮します。たとえば、EDR(エンドポイント検知・対応)やEPP(エンドポイント保護プラットフォーム)は外部からのサイバー攻撃への防御には優れていますが、内部関係者による意図的な持ち出しまでは想定されていません。また、DLP(情報漏えい防止)は社内での持ち出し制御には有効ですが、いったん外部に渡ったデータの利用までは制御できません。
このように、ファイルそのものに制御をかけられるDRM/IRMは、サプライチェーン経由での技術流出リスクに対して最も現実的かつ有効なアプローチであると言えます。中でも、当社のDRM/IRMソリューション「DataClasys(データクレシス)」は、導入実績・柔軟な運用性・高いセキュリティレベルが評価され、多くの企業に採用されています。以下では、その選ばれる理由をご紹介します。
CADファイルにも対応:技術情報を”本当に”守る
他社のDRM/IRM製品では対応が難しい3DCADファイルに対しても、当社製品は暗号化とアクセス制御が可能です。設計情報や図面データなど、まさに守るべき技術情報を対象にできる点で、他社製品と一線を画します。既存顧客環境での動作実績は、代表的なCADアプリケーションであるAutoCAD、SolidWorks、CATIA、NX、Creo、iCAD などがあります。
その他のアプリケーションや詳細な対応状況についてはこちらの利用実績のあるアプリケーション一覧をご確認ください。または資料をご請求ください。
オフライン利用に対応:サーバ接続不要の柔軟な運用
一般的なIRM製品では、鍵管理サーバとの常時接続が必要とされることが多く、海外拠点や取引先での利用時には本社サーバへの接続環境が前提となります。当社製品では、あらかじめ設定された一定期間内であればサーバと接続せずに暗号化ファイルを開くことが可能です。これにより、通信環境に制約のある現場でも柔軟かつ現実的な運用が可能となっています。
閉域網での運用に対応:内部からの持ち出し対策を強化
高度な先端技術情報をインターネット非接続の閉域網で管理している企業にも導入可能。そうした環境でも、暗号化とアクセス制御によって内部からの技術流出リスクに対応できます。
純国産・自社開発:経済安全保障の観点からも信頼性
当社製品は日本国内で開発・提供している純国産ソフトウェアです。海外製品では懸念されがちな情報の扱いやサポート対応においても、信頼と迅速性を両立しており、既存のお客様からも高く評価されています。
技術流出対策として当社製品を導入されたお客様事例
サプライチェーンからの技術流出対策としてDataClasys(データクレシス)を導入されたお客様の事例の一部をご紹介します。運用方法の詳細にご興味ある方は是非お問い合わせ下さい。
マツダ株式会社 様

大手自動車メーカーのマツダ株式会社では、生産設計への早期着手、網羅的な評価の実施による手戻り抑制のために、機密情報である新車の製品データを海外生産拠点のエンジニアに共有する必要がありました。
万が一にも漏洩があってはならないため、安全な情報共有の方法を検討したところ、DRM/IRMソリューションが同社の要件を最も満たすであろうとの結論に至りました。
DRM/IRM製品を6種類ほどピックアップした中から、「CADアプリへの対応実績」「権限設定の細かさ」「対応システムの多様さ」などを理由に当社のDataClasys(データクレシス)を選定いただきました。
ダイヤゼブラ電機株式会社 様

自動車メーカー向けの点火コイル市場で世界トップクラスのシェアを誇るダイヤゼブラ電機様は、かねてよりCADで作成した設計データを社外へセキュアに提供する方法を模索していました。
はじめはパスワードによる保護をかける運用にしていましたが、一度解除してしまえば制御は働かなくなってしまうため、取引先や別業者へ二次流出の心配がありました。また、海外で退職者がでた時には容易に持ち出すことができてしまう懸念もありました。
DataClasys(データクレシス)を選定いただいた理由は、「複数のCADを使って設計業務をしている同社の運用に適していたこと」「パフォーマンスの劣化がなく業務効率に影響がなかったこと」などを挙げていただいています。
最後に
技術流出のリスクは、もはや一部の特殊な企業だけの課題ではありません。経済のグローバル化やオープンイノベーションの進展に伴い、あらゆる業種・業態の企業が、内部・外部を問わず技術情報の持ち出しリスクにさらされる時代にあります。
経済産業省が公表した「技術流出対策ガイダンス」では、企業が自らの判断でリスクに応じた対策を講じていくことが求められています。その中でも、ファイル単位での暗号化・アクセス制御を可能にするDRM/IRMは、サプライチェーンを含む広範なリスクに対応できる実践的な手段です。
当社の「DataClasys(データクレシス)」は、CADファイルへの対応やオフライン環境での利用、閉域網での導入といった、実際の業務で求められる柔軟性を備えた製品です。さらに、純国産・自社開発ならではの安心感と迅速なサポートにより、数多くの企業から信頼をいただいています。
自社の技術情報をどう守るかに悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。
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参考
※1 技術流出対策ガイダンス第1版 | 経済産業省 貿易経済安全保障局 技術調査・流出対策室 2025年5月23日
※2 経済安全保障上の課題への対応(民間ベストプラクティス集)-第2.0版-| 経済産業省 貿易経済安全保障局 技術調査・流出対策室 2025年5月23日時点
※3 経済安全保障に関する産業・技術基盤強化 アクションプラン(再改訂)| 経済産業省 貿易経済安全保障局 2025年5月30日