情報漏えい対策の要点は二つ「漏えいを把握」「暗号化で読ませない」

セキュリティにどれだけコストをかけるべきかは、いつも悩ましいテーマです。防御はどうしても“守りの投資”になりがちで、しかも完璧はありません。積み増そうと思えばどこまでも積める一方で、費用対効果の手触りは得にくい。「どの程度までやれば十分か」に納得感のある答えを出すのは簡単ではありません。
まずは「外側の現状把握」から
出発点は、いま自社が置かれているリスクをちゃんと知ること。社内のログやEDRが見せてくれるのは“内側”で起きていることですが、実害のサインはインターネット上の“社外側”に表れやすいのが実情です。たとえば、社員のメールとパスワードが第三者のリストに載っていないか、偽ログインページが作られていないか、機密の断片がPaste系サイトで公開されていないか――。情報漏洩確認サービスを使えば、こうした社外環境での情報の漏えいを継続的に見張れます。まずは事実を見える化し、そのうえで投資の過不足を議論するのが理にかなっています。
情報漏洩確認サービスとは
情報漏洩確認サービスは、公開情報(OSINT)や半公開の場を横断して、社外環境での情報の漏えいの気配を探し続ける仕組みです。ダークウェブの掲示板やマーケット、ハッカーフォーラム、Paste系サイト、SNS、さらにドメイン・証明書情報や公開リポジトリまでを、自社のドメインやブランド、製品名、役員名などのキーワードで継続的にクロールします。そこで見つかるのは、社名ドメインのメールとパスワードが並ぶ一覧、類似ドメインや偽サイトの出現、設計図やコード片の公開といった、被害につながりやすい社外側のサインです。非侵入型で環境に負荷をかけないため、現場への導入もしやすいのが利点です。
調査すると“漏えいが見つかることがある”現実
実際に調べてみると、社外で情報が漏えいしている痕跡が見つかることがあります。たとえば「従業員の資格情報が第三者のリストに含まれていた」ケース。社名ドメインのメールアドレスとパスワード(平文、または簡易なハッシュ)が並んだ一覧が、掲示板や共有サイト、売買マーケットで確認される、といったものです。もし仕事用アカウントでも同じパスワードを使っていたなら、その組み合わせで企業のSaaSやVPN、メールに正規ユーザーとしてログインされてしまうおそれがあります。つまり「社名ドメインのメール+使い回しパスワード」が社外に漏えいすると、気づきにくい侵入の入口になりやすい、ということです。現状を把握しておくことは、どこに力を入れるかを決める材料になります。
根本解決は「復号できない=読めない」――IRMでの対策
社外での漏えいを完全にゼロにはできません。クラウドやSaaSの広がり、協業や委託、人の入れ替わり――業務が前に進むほど、接点は増えます。だからこそ、漏れても中身を守り切る設計が肝心です。鍵となるのは、暗号化を前提に「復号できない限り読めない」状態をつくること。ここで効いてくるのがIRMです。
IRMは、保存場所や経路に関わらずファイルそのものを暗号化し、復号鍵を持つ人だけが内容を開けるようにします。たとえ攻撃者がファイルを手にしても、復号鍵がなければ文字や図面は暗号文のままで読めません。業務で必要な人には復号を許し、閲覧や編集といった通常利用は可能にしつつ、印刷・コピー・外部保存・オフライン利用などの持ち出し系操作はポリシーで抑えます。要するに、日常の作業はそのままに、外へ出る道だけを塞ぐことで、仕事を止めずに漏えいリスクだけを確実に削れます。加えて、ファイル単位での鍵がなければ読めないという対策が、情報漏洩の実害化を防ぎます。
保護の単位はあくまでファイルです。ローカル、サーバ、USB、クラウドのどこにあっても、「鍵がなければ読めない」状態は一貫して保たれます。自動暗号化やディレクトリ連携を活用すれば、利用者は“守られていること”を意識しすぎることなく、いつも通りの手順で仕事ができます。守るために止めるのではなく、仕事を進めながら守る。その現実解がIRMです。
まとめ――見える化で状況をつかみ、最後は「復号できない=読めない」で締める
セキュリティ投資は“きりがない守り”ではなく、根拠のある守りへ。まずは情報漏洩確認サービスで社外環境における漏えい状況を可視化し、今どんなリスクが横たわっているのかを押さえる。次に、漏洩を完全には避けられない前提に立って、IRMで「復号できない=読めない」「不要な操作はさせない」状態を標準にする。事実で判断し、暗号で守る――この二段構えなら、コストを膨らませずに実害を生まない強さに近づけます。守るための投資を、ビジネスを止めずに前へ進めるための投資に変えていきましょう。
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