経済産業省「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を公表 国産セキュリティ製品のシェア拡大を目指す

経済産業省は2025年3月5日、「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を発表しました。本戦略は、国内で活用されるセキュリティ製品の多くを海外製品に依存している現状から脱却し、国内のサイバーセキュリティ産業の活性化、国産セキュリティ製品・サービスの競争力の向上と市場の成長を促すことを目的としています。
経産省は、本戦略に取り組むことで、約10年以内にサイバーセキュリティ産業における国内企業の売上高を足元から3倍超(約0.9兆円から3兆円超)に増やすことを目指すとしています。※
背景
昨今のサイバーリスクの高まりに伴い、企業のセキュリティ対策の必要性・ニーズも飛躍的に高まっています。一方で、国内で活用されるセキュリティ製品・サービスのマーケットシェアは海外事業者が過半数を占めており、日本企業のシェアは約4割程度とその供給能力は高いと言えません(2021年時点)。しかし、以下の理由から、国内のセキュリティビジネスの活性化を推し進めることには意義があると考えられます。
- 多様なセキュリティ製品・ツールが市場に流通し、その中から企業が自社のリスクに見合った製品を選択できることは、適切なセキュリティ対策を講じる上で重要である。
- 我が国へのサイバー攻撃の特異性が存在する場合もあり、これに対応した製品・サービスを提供できる国内企業の存在は安全保障上重要である。
- 成長市場であるサイバーセキュリティ市場における国内での製品・サービス供給拡大/海外での販路拡大は、日本のデジタル赤字解消に貢献する。
このような状況から、国内のサイバーセキュリティ産業の振興は不可欠となっています。
国内サイバーセキュリティ産業の課題と取組の概要
しかし、国内の製品ベンダーは以下の理由から競争力の低下に陥っています。
- 導入実績が重視される商慣習
セキュリティ製品・サービス調達の際に、導入実績が重視される商慣習があるため、実績のない企業・製品にとっては参入障壁が高い。高度な技術を有する企業・製品であっても販路を拡大できず、事業として成立しないため、企業が育たない。 - 十分な開発投資が行われにくい事業環境
販路開拓・事業拡大にハードルが存在する状況下では安定的な収益基盤が見通しづらいため、製品開発・研究開発への投資が限られる。また、セキュリティ製品の販売はSIerが商流を担っており、製品ベンダーで対応できる余地が限られる。 - セキュリティ産業全体を支える基盤の存在
セキュリティ人材育成や国際市場の開拓等、産業全体を支える基盤は重要であるものの、個社での対応は難しい。
結果として、国内のセキュリティビジネスは「買い手がつかないので儲からない」「儲からないので事業開発や投資が十分なされず競争力が低下」という悪循環に陥っています。これらの課題を打破する政策として、「サイバーセキュリティ産業振興戦略」が掲げている政策対応は以下となります。
- スタートアップ等が実績を作りやすくなる/有望な製品・サービスが認知されるための取組
・「スタートアップ技術提案評価方式」等の枠組みを活用し、政府機関等が有望なスタートアップ等の製品・サービスを試行的に活用(中長期的には主体・取組を拡大)
・有望な製品・サービス・企業の情報を集約・リスト化し、政府機関等へ情報展開する/業界団体とも連携して審査・表彰を実施 - 有望な技術力・競争力を有する製品・サービスが創出され、発掘されやすくなるための取組
・セキュリティ関連の技術・社会課題解決に貢献する技術・事業を発掘するための「コンテスト形式」による懸賞金事業等を実施(中長期的には安定供給確保策も検討)
・約300億円の研究開発プロジェクトを推進し社会実装を後押し
・我が国商流の中心であるSIerと国産製品・サービスベンダーとのマッチングの場を創出 - 供給力の拡大を支える高度人材が充足する/国際市場展開が当たり前になるための取組
・高度専門人材の育成プログラムを拡充/セキュリティ人材のキャリア魅力を向上・発信
・海外展開を支援/標準化戦略を促進/関係国との企業・人材交流を促進
これらの取組により製品ベンダーを後押しすることで、競争力の強化とシェアの拡大が実現すると考えられます。
今後のロードマップ
本戦略では、今後のロードマップとして以下のように掲げています。
- 来年度:予算編成過程等を踏まえた上での取組を具体化する
- STEP1(約3年以内):調達機会の拡大などを通じたベンダー企業数の増加、セキュリティ人材数の増加
- STEP2(約5年以内):市場における我が国企業のマーケットシェアの拡大
- STEP3(約10年以内):安全保障の確保やデジタル赤字の解消への貢献を実現するとともに、KPIとして国内企業の売上高を足下(約0.9兆円)から3倍超(約3兆円)を目指す
今後、取組の継続的なフォローアップを図る中で、スケジュールや目標の一層の具体化を図っていくとのことです。
国産セキュリティソフト「DataClasys」
弊社は、ファイル暗号化・DRM/IRM製品「DataClasys(データクレシス)」を開発・販売するセキュリティベンダーとして、2018年に事業を開始しました。DataClasysは国産・完全自社開発の暗号化製品として、中央省庁・自治体、金融機関、製造業、教育機関などを中心に1,000社以上の導入実績を誇ります(2025年2月時点)。また、2023年には業務提携先の公益財団法人防衛基盤整備協会様が防衛装備庁から受託した、令和4年度「防衛装備品製造過程等におけるサイバーセキュリティ対策強化事業」へファイル暗号化ツールの開発元としてソリューション提供などの支援を行った実績がございます。(詳しい内容については「令和4年度『防衛装備品製造過程等におけるサイバーセキュリティ対策強化事業』を支援します」をお読みください。)
今後も、国産のセキュリティソフトを独自開発するベンダーとして、ファイル暗号化技術を通じて企業や組織が直面する情報セキュリティ課題を解決し、日本の経済安全保障に貢献することを目指してまいります。DataClasysのようなDRM/IRM製品は、データへのアクセス認証・認可を都度行う仕組みを持つことから、現在外資企業にシェアを奪われているゼロトラスト分野にも関わる重要なシステムです。政府の期待に応えるべく、更なる技術開発に努め、より安全で信頼性の高いソリューションを提供してまいります。
DataClasysの特徴について
DataClasysは、企業や行政といった組織の内外を通じて機密性の高いファイルを安全に共有するシステムです。暗号化したファイルは管理者が許可した利用者しか解読できないので、第三者に流出しても情報は漏えいしません。さらに、DataClasysには下記の特徴があります。
- あらゆるファイルを暗号化:Office文書やPDFはもとより、3DCADデータや動画などほぼすべてのファイルを暗号化できます。そのため、個人情報だけでなく、日本企業の保有する先端技術情報や図面データの流出も防ぐことができます。
- ファイルの重要度による効率的な管理:ファイルの重要度に応じて「極秘」、「社外秘」、「取り扱い注意」などの「機密区分」を設定し、ファイル単位、フォルダ単位での管理が可能なため、本来守るべき情報資産を的確に管理できます。また、「機密区分」に対し、利用者の所属や職位に応じて権限(閲覧、編集、印刷、コピー&ペースト、スクリーンショットなど)を付与することで、必要な人に必要な権限だけを与える(Need-to-know)ことが可能です。
- 利便性・効率性を落とさずにセキュリティ強化:ファイルを右クリックで個別に暗号化するだけでなく、ファイルサーバやPCのフォルダに保存するだけで自動暗号化する機能があります。また、暗号化したファイルは平文ファイルと同じようにダブルクリックで利用することが可能です。
- オフライン環境でのファイル利用や閉域網への導入:DataClasysはインターネット接続を前提としたDRM/IRM製品とは異なり、オフライン環境でも暗号化ファイルが利用できるように設定することが可能です。また、システム全体を閉域網へ導入し、外部からのサイバー攻撃だけでなく内部からの持ち出し対策にも貢献することができます。
- 国産・自社開発のDRM/IRM製品:DataClasysは国産・自社開発のセキュリティソフトです。海外にOEMしている製品とは異なり、障害発生時の問い合わせサポートも迅速かつ的確に行うことが可能です。また、お客さまのニーズに合わせたカスタマイズや製品改良にも柔軟に対応することができます。
さらに詳しい製品情報にご興味がございましたら、下記よりぜひお気軽にお問い合わせ下さい。
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参考
※ 我が国から有望なサイバーセキュリティ製品・サービスが次々に創出されるための包括的な政策パッケージ「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を取りまとめました |経済産業省 2025年3月5日