2024年4月1日施行の改正不正競争防止法の営業秘密保護の強化ポイントを分かりやすく解説

2024年4月1日に改正不正競争防止法が施行されます。前回の改正は平成30年11月29日に施行されたので、約5年ぶりになります。

今回の改正のポイントは、知的財産保護のデジタル活用面での強化やビジネスのグローバル化に伴う法制度の整備などが挙げられます。その中で、営業秘密保護も強化されました。今回のコラムでは、改正不正競争防止法の営業秘密保護で強化されたポイントを説明します。

改正不正競争防止法の営業秘密保護に関する変更点

近年、退職者や業務委託先から顧客情報や技術情報などの営業秘密を不正に持ち出すケースが多数発生しています。そのようなケースでは、不正に持ち出された営業秘密は転職先などの競合他社で使用されたのではないかと考えられますが、実際に企業内部で営業秘密を使用したことを立証することは非常に困難でした。

今回の改正では、上記のように立証が困難だった退職者や業務委託先などの営業秘密にアクセスできる者よって漏洩された営業秘密は、反証が無い限り不正入手した組織が使用したことと認められます。

反証が無い限り、窃取された営業秘密を不正入手した組織が使用したことと認められるルール(「使用等の推定規定」と言います)は、これまではアクセス権限が無く不正取得した営業秘密に対してのみ適用されていました。しかし、これでは産業スパイなど悪質性が非常に高いケースにのみ限定されていました。

今回の改正不正競争防止法では、正当に持ち出す権限を持つ者によって窃取された営業秘密にも「使用等の推定規定」が適用できるようになりました。これによって、サプライチェーンやオープンイノベーションなどのような複数の企業によるビジネス、雇用の流動化、テレワークなどのリモートワークなどの現代社会が抱える漏洩リスクに対応できるようになります。

機密情報が営業秘密として認められるには

この改正不正競争防止法の恩恵を受けるためには、機密情報が営業秘密であると認められる必要があり、それには「非公知性」「有用性」「秘密管理性」の3つの要件を満たす必要があります。

この中でも秘密管理性が満たされずに営業秘密として認められないケースが多々あります。
この秘密管理性を満たすには「秘密」として管理されている必要があり、紙などの物理媒体であればキャビネットや棚の施錠や「マル秘」の表示などの対策を行い、秘密管理している意思を従業員などに示す必要があります。

デジタルデータに対して秘密管理性を満たすにはパスワード保護などの対策が考えられますが、最も有効な手段としてDRM/IRMによる保護が挙げられます。
DRM/IRMで保護された情報を利用するためには、利用者が正規のユーザであることをシステムから認証される必要があります。また認証を受けた上で、利用者に応じた権限制御を行います。この認証と役割に応じた権限制御によって、「秘密管理性」が満たされやすくなります。

不正競争防止法は今回の改正によって、営業秘密の保護は現代社会が抱えるリスクに寄り添う形となり、機密情報を保護する組織にとってはポジティブな改正ではないでしょうか。その恩恵を受けるため、まずは保護対象の情報がしっかりと営業秘密として認められることがとても重要になります。

特に営業秘密の三大要素の内の重要な「秘密管理性」を確保するために、社内の機密情報の管理方法や取り扱いの見直しをしてみはどうでしょうか。

参考