多発する内部不正による国外への技術漏洩に国も警戒

12月1日に日経ビジネス電子版にて、新日鐵住金の技術情報の漏洩事件を題材に取り上げ、それ以降も発生している国外への情報漏洩に対して警笛を鳴らしている記事※1が掲載されました。

多発する内部不正による情報漏洩とその先にある二次漏洩

この新日鐵住金から韓国ポスコ社への漏洩事件は、新日鐵住金が保持していた「方向性電磁鋼板」の製造技術がポスコ社に漏洩したことが2012年に発覚し、当時の製造業界の中で大きな話題となりました。
この事件は、更にポスコ社の元社員が中国の宝山鋼鉄社へ同技術を漏らしていたことで起訴され、その後の裁判で新日鐵住金から入手した技術であることを証言しました。この証言がきっかけで、新日鐵住金の技術が漏洩したことが発覚しました。

この事件以降も、積水化学やソフトバンクを始め様々な企業で内部不正による情報漏洩は増加傾向で、2021年に発生した営業秘密漏洩事件の件数は23件と過去最高となっているようです。しかし内部不正による情報漏洩は発覚しにくく、公になっている事件は全体のごく一部だと考えられます。

そして技術情報の漏洩先の多くは中国であるそうです。経済産業省が平成18年に行ったアンケートによる実態調査では、漏洩があった219社の内の64.5%にあたる80社が中国へ漏洩したと回答しています。この実態調査から16年経った現在では、中国への情報漏洩は更に多くなっていると思われます。

日本の製造業の源泉である技術情報が、次々と内部不正によって中国を始めとした国外に漏洩しています。そして漏洩した技術は、先述のポスコ社から宝山鋼鉄社へ漏洩していたように漏洩先の企業からさらに他の企業へ漏洩している可能性は十分に考えられます。
「自社独自の技術が、いつの間にか中国の複数の企業では当たり前の技術になっていた」といったことも裏では既に起こっているかも知れません。

国が警戒する民生技術の軍事転用

今、国は日本企業が持つ技術が国外へ漏洩することを非常に警戒しています。その理由は一般消費者向けに開発された民生技術が他国で軍事転用されるケースが相次いでいるからです。

日経ビジネスの記事では、ミサイルの構造材料に成り得る炭素繊維技術が東レの中国子会社から経済産業省の輸出許可のない中国企業に流出した事件※2、軍用ドローンに使用された国内製品の製造メーカの経営者が不正輸出の容疑で書類送検された件※3が挙げられていました。

他に軍事転用が懸念される技術として、経済産業省は「工作機械」「シアン化ナトリウム」「ろ過器」を挙げています。このような技術に強みを持っている様々な企業が中国を始めとした様々な国から狙われていることに対して、国は非常に危惧しています。

軍事転用が懸念される技術は、経済産業省による輸出許可がある企業に対してのみ販売が許されています。しかし先述の東レの中国子会社から炭素繊維技術が漏洩した事件では、中国子会社が現地採用した従業員によって許可のない企業へ販売し利益を得ていました。
このように国も対策を取っているのですが、技術の漏洩は後を絶ちません。

求められる情報漏洩対策

今、日本の製造業が持つ高品質な技術は、中国などの様々な国から狙われています。国もそういった状況を食い止めるために様々な対策を取っていますが、それでもなお技術の漏洩は止まることはありません。よって企業が本気で情報漏洩の対策を取る必要があります。

今回の記事に取り上げられた内部不正は、内部事情を知った関係者が行うために対策が非常に困難です。そのため、内部不正による情報漏洩対策には、より本質的な対策が求められます。

DataClasysは「情報そのものを守る」ことをコンセプトにしたセキュリティ製品です。
DataClasysによって保護されたファイルは、暗号化されているために不正に入手しても暗号化を解除する復号鍵が無いと利用することはできません。そしてファイルに対して権限制御を行うことで、例え内部関係者であっても情報漏洩に繋がる操作は禁止されます。
DataClasysはファイル単位に「暗号化」と「権限制御」を行うことで、情報そのものを守り、内部不正による情報漏洩を防ぐことができます。

技術情報の国外への漏洩を食い止めるために、企業側に本質的な情報漏洩対策が求められています。その本質的な情報漏洩対策の必要性を感じているのであれば、一度DataClasysにご相談ください。

参考

※1 [新連載]「まさか中国に漏れるとは」 日鉄元技術者の後悔:日経ビジネス電子版

※2 中国における炭素繊維の流出事案について (METI/経済産業省)

※3 不正輸出未遂疑い不起訴 東京地検、軍用ドローン部品 | 共同通信