「特許」「営業秘密」による知的財産の保護について

設計情報や製造方法などの知的財産は、技術的なアドバンテージを確立し、あらゆる市場の優位性を維持する上で、その企業の心臓ともいえる重要な情報です。一方、情報のデジタル化が進む中、標的型攻撃などのサイバー攻撃や関係者による不正行為によって、知的財産が競合他社などの外部へ漏洩する事件が多く発生しています。

これらの知的財産は、特許化などによって知的財産権を保有する方法と不正競争防止法の営業秘密として秘匿する方法のいずれかで、法律上の保護を受けることができます。知的財産権の侵害や営業秘密の漏洩の際は、それらを犯した者が民事罰及び刑事罰の対象となります。

今回のコラムでは、特許権と営業秘密のそれぞれについて説明します。

特許権について

知的財産権の一つである特許権を保有した場合、該当する技術や発明内容を公開することで、一定期間の間、特許権に関する内容を独占することができます。

技術内容を公開することにおいては、メリットもデメリットも発生します。メリットとしては、独占的に利用できる技術が公的に明確になる点や公開することで企業ブランドや営業力が向上する点など、様々な効果が期待できます。一方、デメリットとしては競合他社に研究開発の動向や周辺技術の気付きを与えるきっかけになりかねない点、特許権の保有期間が20年と限定されている点が挙げられます。

不正競争防止法の営業秘密について

不正競争防止法で定められた「営業秘密」として適切に管理することで、情報漏洩を法律の下、知的財産は保護されます。この営業秘密は、以下の3つが要件として求められています。

  • 秘密として管理されている [秘密管理性]
  • 生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報 [有用性]
  • 公然と知られていないもの [非公知性」

上記の3つの要件の内、「秘密管理性」の認定が厳しい傾向があり、過去の裁判でも認められないケースが多く存在しています。

この秘密管理性を満たすには、アクセス制御や利用者が客観的に機密情報であることを認識できる必要があります。例えばデジタルデータであれば、暗号化を用いてアクセス制限を行う方法などがあります。また紙などの物理媒体であれば、専用の保管庫での管理や「マル秘」などの文字を表示する方法が挙げられます。

このことから営業秘密の要件の一つである秘密管理性を満たす上で、ファイルを暗号化して情報漏洩に繋がる操作を制御するDataClasysなどのDRM/IRMソリューションは有効な手段になります。

下表は、経済産業省が特許権と営業秘密のメリット・デメリットについてまとめた比較表です。

特許権 営業秘密
メリット
  • 事前の審査を通じ権利の内容が明確となる。
  • 登録などを通じ権利の存否が明確化。
  • 一定期間、譲渡可能な排他的独占権を取得できる。
  • 保有期間の制限もなく、差別化を図れる。
  • 自社の事業戦略の方向性が明らかにならない。
  • 失敗した実験データなどの特許になじまないノウハウなどに適している。
デメリット
  • 出願内容の公開が前提であるため、開発動向を知られたり周辺特許を取得される可能性がある。
  • 保護期間が満了したら、誰でも使用可能。
  • 他社の独自開発やリバースエンジニアリングにより、独占できなくなることがある。
  • 適切な管理をしていないと法律による保護を受けられない。
出典:経済産業省 「技術流出防止・営業秘密保護強化について」(平成26年9月)

まとめ

企業の技術情報などの機密情報が狙われ、情報漏洩事件が多発する中、知的財産を確実に保護する対策が求められています。

知的財産の守る上で、今回のコラムで取り上げた特許法や不正競争防止法などの法律は機密性を維持する上で一つのガイドラインになります。そしてもし権利の侵害や情報漏洩が発生してしまった時、差止請求や損害賠償請求などの民事罰、懲役や罰金刑などの刑事罰は、被害に遭った企業にとって大きな味方になります。

このような法律に基づいた対策も、知的財産を管理する上では非常に重要になっています。

営業秘密は技術やノウハウなど非常に機密性が高く、営業秘密の漏洩は組織に甚大な影響を与えます。そして漏洩事件は裁判で裁くことはできますが、漏洩して競合他社に渡った情報は戻ることはありません。営業秘密の漏洩は絶対に防がなければなりません。

営業秘密の漏洩対策にお困りの方や不安を感じている方は、ぜひ一度お問い合わせください。
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