産総研の主任研究員が中国へ先端技術を漏洩 研究機関は技術流出をどう防ぐか

事件の概要

2023年6月15日、国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(以下、産総研)の主任研究員の男が不正競争防止法違反容疑で逮捕されました。容疑者は2018年4月13日、自身の研究内容であるフッ素化合物に関する情報を中国企業に漏洩させた疑いがもたれています。この情報はフッ素化合物の合成に関わる先端技術であり、産総研の営業秘密に該当します。国の研究機関から中国への情報漏出が立件されるのは極めて異例との事です。※1

産総研は国内最大の公的研究機関で、多額の公費が投じられています。このことから、日本の先端技術を守る経済安全保障の観点からも問題となることが指摘されています。※2

研究データを受け取った中国企業は、その約一週間後に中国で特許を申請していることもわかりました(2年後に取得)。内容が酷似していたため、警視庁公安部は研究データを転用したとみています。また、この中国企業の日本代理店はつくば市にあり、容疑者の妻が社長を務めているとのことです。※3

本事案でもう一つ特筆すべきは、容疑者の身元です。容疑者は「国防7校」の一つである南京理工大学の出身であり、また2002年4月から研究員として産総研で勤務していましたが、一方で国防7校の一つである北京理工大学の教職を兼任していた時期がありました。※4

国防7校は中国人民解放軍と関連があり、兵器開発ともつながりが深いとされています。中国政府は民間の最先端技術を軍事力強化につなげる「軍民融合」を進めており、国防7校はその中核とされています。事件が公になった同月の2日、日本政府は閣議決定した答弁書の中で、2020年度時点で国防7校のうち6校から、計約39人の留学生が日本の大学へ留学していたことを明らかにしており、技術流出が懸念されていました。※5

産総研はウェブサイトにて、今後も捜査に全面的に協力し、情報漏えい対策の強化と法令順守の徹底に取り組むとしています。※6

先端技術を有するアカデミアは今すぐ漏洩対策を

弊社ではこのような海外への技術流出について、過去に複数のコラムで警戒を促してきました。下記のコラムでは、2020年に起きたソフトバンク元社員によるロシアへの技術流出や、その翌年2021年の積水化学工業の元社員による中国への技術流出を例に挙げ、産業スパイによる企業が身を守る方法について解説しています。

また、下記のコラムでは電子機器メーカーに勤務していた中国人男性によるスマート農業に関する情報の技術流出事案の経緯を説明し、技術流出防止のための取り組みとしてセキュリティ・クリアランス制度についても触れています。

ご興味のある方は是非ご確認ください。

また、今回の事件により、一般企業だけでなく、産総研のような国の研究機関も産業スパイから狙われていることが改めて明らかとなりました。このような研究機関や大学に対して外国企業が共同研究を持ち掛け、技術情報を盗み出そうとする例もあり、日本の最先端技術を守るためにアカデミアは企業と同様、またはそれ以上の漏洩対策を実行していかなければなりません。

日本が「スパイ天国」という不名誉な呼ばれ方をされないためにも、各機関がセキュリティ意識を高めていくことが重要なのです。

DataClasysで実現できることとは

産業スパイを含む内部関係者からの情報持ち出しを防ぐのは困難です。一般的に有効な手立てとしてはアクセス制御が挙げられますが、これには様々な方法があります。

弊社の提供するDRM/IRMソリューション『DataClasys』は、機密文書に対してファイル単位で暗号化をかけ、アクセスする必要のある人間のみがファイルにアクセスできるようにすることが可能です。DataClasysのようなファイル単位での暗号化は、フォルダやシステムへのアクセス制御に比べ、より高度なセキュリティを実現することが可能です。詳しい理由については下記をご確認ください。

技術情報を含むファイルを暗号化し、利用権限をコントロールすることで、先端技術の流出リスクへの対策となります。弊社の提供する国産のセキュリティソリューションを先端技術の流出防止にぜひお役立てください。

参考

※1 中国企業に先端技術情報を漏えいした疑い、産総研の中国籍研究員を逮捕 | 讀賣新聞オンライン 2023年6月15日

※2 中国企業に「フッ素化合物」情報漏えいか、逮捕の産総研研究員は「国防7校」兼任時期も | 2023年6月16日

※3 産総研漏えい、データ提供の1週間後に中国企業が特許申請…内容が類似 | 2023年6月16日

※4 中国人研究員「先端技術情報」漏えい事件で露呈、“スパイ天国”日本のあきれた実態【元公安捜査官が解説】 | 2023年6月17日

※5 中国軍とつながり深い「国防7校」から日本留学、東工大などに39人…技術流出の恐れも | 讀賣新聞オンライン 2023年6月2日

※6 職員の逮捕について(第二報) | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 2023年6月17日