島耕作を襲った内部不正事件の対策を考察してみました

「島耕作」シリーズは1983年から連載を開始し、40年目の今も連載が続いています。
開始当時は課長職でしたが、部長、取締役、常務、専務、社長、会長と組織のヒエラルキーを上り詰め、75歳となった今は「社外取締役 島耕作」にて「ウエマツ塗装工業」の社外取締役を務めています。さらに11月1日より実在する企業の社外取締役も務めることになったそうです。※1

その「島耕作」シリーズですが、島耕作が社長を務めていた「テコット」が開発する製品の設計情報が内部不正によって中国企業に漏洩するストーリーがあります。
このコラムでその事件への考察をしてみました。ネタバレも含まれていますので、ご注意ください。

内部不正事件のあらすじ

漏洩した情報は6月に発売を控えた扇風機の設計情報で、中国企業の「連夢」はその設計情報を元に扇風機を開発し、テコットが発売を開始する前の2月に発売を開始します。
そのため、テコットは発売を予定していた扇風機の中国での発売を中止することになってしまいます。

情報漏洩の捜査を行う島耕作達は、扇風機事業部の商品企画部長の余部健太氏による内部不正であることを突き止めます。しかし余部氏は中国でゴルフのプレー中に一緒に回っていたメンバーのショットを頭部に受け入院し、一命を取り留めたものの急な様態悪化によって謎の死を遂げます。

この情報漏洩事件には国会議員も絡んでおり、民自党の中で一番の親中派である柏原総務会長が仲介をしたであろうと考えられています。余部の突然死は、島耕作と友好関係を持つ国会議員の加治一明氏がその柏原氏へこの事件を匂わす会話をした3日後のことで、柏原氏との会話がきっかけとなり証拠隠滅のために殺害されたと考えられます。

原因とその後

余部氏による内部不正の動機は、会社への不満でした。

テコットは島耕作が専務時代に初芝電器産業と五洋電器の統合経営の末に生まれた会社です。
韓国企業ソムサンの敵対的M&Aの危機にあった五洋を初芝はホワイトナイトとなって救い経営統合を果たします。しかし旧五洋の社員の間では、五洋が初芝に吸収合併され、旧初芝の社員が旧五洋の社員よりも優遇されているという印象を持っていました。

余部氏も元五洋の社員で、同様の不満を会社に持っていました。その結果、3000万円の報酬と引き換えに内部不正をはたらき中国企業に自社の設計情報を漏洩させてしまいました。
島耕作は余部氏の上司から動機を聞き、旧五洋の社員を重要ポストへの配置などを考えます。

事件の考察

テコットで起こった内部不正による情報漏洩は現実にもよく発生する事件で、対策に非常に難しい一方で企業への影響がとても大きいという特徴があります。企業にとって厄介な特徴を持つ内部不正ですが、2021年5月に開催した「関係者の不正行為による情報漏洩対策」セミナーで対策として以下の3つを挙げました。※2

  • 職場環境の改善
  • 社内規定、コンプライアンスの整備
  • 防犯対策やIT技術によるセキュリティ対策
2021年5月27日開催「関係者の不正行為による情報漏洩対策」セミナー資料

島耕作が考える旧五洋の社員の優遇は、上記の「職場環境の改善」に当たります。この「職場環境の改善」や「社内規定、コンプライアンスの整備」は、内部不正への本質的なアプローチでとても重要な対策ですが、大がかりであるため効果が出るまでに長い期間がかかり即効性がありません。

その一方で「防犯対策やIT技術によるセキュリティ対策」は即効性があるため、最初に取り掛かりやすい対策です。島耕作も今回の事件を通して、セキュリティシステムの導入を検討した方がよかったかも知れません。

かっぱ寿司の元社長が逮捕された事件※3など、内部不正による情報漏洩は今も頻発しています。そしてIPAが毎年発表する「情報セキュリティ10大脅威」※4では、内部不正による情報漏洩が毎年ランクインしており、今年は5位にランクインしました。
このことから多くの企業が内部不正の脅威を感じているのではないでしょうか。

業界を問わず、あらゆる企業で内部不正は発生する恐れがあります。内部不正への対策にお困りの方、本気のセキュリティを検討されている方はぜひお問い合わせください。

参考

※1 島耕作、史上初の“実在企業”社外取締役に就任! サイバー被害への危機感を発信(クランクイン!) – Yahoo!ニュース

※2 2021年5月27日開催「関係者の不正行為による情報漏洩対策」セミナーレポート [コラム]

※3 「かっぱ寿司」の営業秘密侵害 営業秘密の3大要件 [コラム]

※4 情報セキュリティ10大脅威 2022:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構